老人ホームと一口にいっても、種類があり過ぎて混乱しているという人も多いのではないでしょうか。自分の家族が実際に介護が必要になったときに慌てないためにも、老人ホームに関する知識を今のうちから持っておくことが大切です。
ここでは、老人ホームの種類やサービスの内容、入居の条件など、基本的な情報をまとめました。
老人ホームで受けられるサービスは、施設によっても異なりますが、大まかには生活支援・身体介護・機能訓練などがあげられます。生活支援サービスは、調理や洗濯、清掃、買い物といった日々行う家事をサポートするものです。
身体介護サービスは、食事や入浴、着替え、排せつなど、身体に直接触れて行う介助行為のことをいいます。機能訓練は簡単にいうとリハビリのことで、ケガや病気、老化によって衰えてしまった身体機能を回復するために行うものです。
例えば、歩行訓練を行ったり、レクリエーションも兼ねて体操をしたりします。他にも、定期診療・健康診断といった健康管理や、看護師が常駐している施設であれば医療的な処置を行うこともあるようです。また、介護予防の一環として、レクリエーションやイベント、サークル活動なども定期的に開催され、他の居住者とも交流できるような環境も用意されています。
老人ホームを選ぶときは、自分の求めるサービスをその施設では提供しているのか、しっかり確認するようにしましょう。
老人ホームは、「特別養護老人ホーム」と「有料老人ホーム」という2種類に大別されています。どちらも高齢者がサービスを受けられる施設である点は共通していますが、運営主体が異なります。特別養護老人ホームは略して「特養」とも呼ばれ、自治体や社会福祉法人などが運営を任されたいわゆる公的施設です。
ですから、所得が低い人でも比較的入居しやすいような料金制度が設けられており、地域によっては待機者が多すぎてすぐには入居できないケースも珍しくありません。また、特養に入居するためには、原則として65歳以上で、かつ要介護3以上であることが条件とされています。
対して有料老人ホームは、民間企業が運営を行っている民間施設です。そのため、特別養護老人ホームに比べると料金は割高になる傾向で、各施設によって提供しているサービスも異なります。
入居できる条件も施設によってさまざまで、今はまだ介護が必要のない元気な高齢者を対象としている所もあれば、介護度が高くほぼ寝たきり状態の人でも受け入れている所もあります。したがって、希望するサービス内容や介護度に合わせて施設を選びやすいのは、有料老人ホームでしょう。
民間施設である有料老人ホームには、異なる種類の施設が存在します。ここでは、主な3つを紹介します。「介護付有料老人ホーム」は、都道府県から指定を受けている施設です。「特定施設入居者生活介護」という介護保険制度上の指定を受けた施設のみが、「介護付」と表示してもよい決まりになっています。
介護付有料老人ホームはさらに「一般型」と「外部サービス併用型」にわけられ、前者は施設のスタッフが介護も担当し、後者は外部事業所に介護部分を依頼しています。介護付有料老人ホームで提供しているサービスは、生活支援や身体介護、機能訓練、レクリエーションなどです。
「住宅型有料老人ホーム」は、食事・清掃・洗濯といった生活支援を行っている施設です。そのため、施設のスタッフが身体介護を行うことはありません。入居者が介護を必要とする状態になったときは、訪問介護などを行っている外部事業所を別に契約して利用するか、介護付有料老人ホームなど身体介護を行っている施設へ移ることになります。
住宅型有料老人ホームによっては、デイサービスや訪問介護事業所が併設されている施設もあり、入居者が自分で外部事業所を探さなくてもスムーズに訪問介護を受けられる体制が整えられている場合もあります。ただし、介護度が高くなると費用がかさむ傾向にあるため、注意が必要です。
「健康型有料老人ホーム」では、身の回りのことは自分でできる自立した高齢者を対象に、食事の提供や家事のサポートなどを行っています。今の元気な状態を維持し続けることを目的としており、スポーツジムや温泉などの健康関連設備が充実していることが特徴です。
介護が必要になったときは、退去して別の施設へ移ることになります。
特別養護老人ホームは、65歳以上で要介護3以上と条件が明確ですよね。しかし有料老人ホームは、施設の種類が複数あることから、入居条件が施設によって異なります。ざっくり3パターンにわけられますが、入居を希望するときはその施設の入居条件をきちんと調べるようにしてください。
3パターンのうち「介護専用型」の施設は、要介護1~5の人が対象であり、要介護認定を受けていない人は入居できません。対して「自立型」の施設は、自分で身の回りのことができる自立状態の人を対象としており、介護が必要な人は基本的に入居不可です。
これら2つを組み合わせたものが「混在型」で、要介護・自立どちらも対象としています。年齢に関しては、「60歳以上」「65歳以上」と定める施設がほとんどです。なかには、特定疾病によって要介護認定が下りていれば、60歳未満の人でも受け入れている施設もみられます。
有料老人ホームに入居するには、契約時にまず「入居金」を支払うことになります。入居金は、施設の利用権を獲得するために支払うもので、まとまった額が必要になるでしょう。もしも契約期間中に途中で退去したときは、未償却分が返金される仕組みです。
そしてもう一つ、月額利用料も発生します。家賃や食費、水道光熱費、サービス費などが主な内容です。それとは別に、理美容代や消耗品代、嗜好品代などが別途費用として発生することもあります。介護保険が適用される場合は、介護サービス費が1割負担(一定以上の収入があるなら2~3割負担)になります。
介護付有料老人ホームでは、介護サービス費は要介護度で決まる仕組みです。どのサービスをどれくらい利用したのか、サービス内容は関係ありません。例えば、要介護1なら月16,000円、要介護2なら月18,000円というように、介護度が高い人ほど介護サービス費が高くなる設定です。